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March 03, 2005

【神保町にはお世話になります】

私は安上がりな男である。
欲しいものは本しかなく(くれるならフジテレビも欲しいが)、望んでいた本が安価で入手できると小犬のように喜んでしまう。
1月に入手したもので最も嬉しかったのは、文章+イラストによる東京案内本、産経新聞社会部編『東京風土図』1・2巻(1961年初版、現代教養文庫)である。
リーズナブル価格であった。

全体は全4巻構成で1・2巻は23区、3巻が都下10市、4巻が多摩と伊豆七島についてまとめている(4冊まとめての古書価は3000円くらい~。でも店頭ではほとんど見かけない)。のちに「オリンピックを契機とする建設ブームで東京の姿はまたガラリと変わった。そこで四十一年秋、区部の全域について改訂」した『改訂東京風土図』城南・城西編(旧1巻)、城北・城東編(旧2巻)が刊行されている(66年)。私が持っていたのは後者の改訂版なので、丁寧に読むと東京オリンピック前後の違いを比較することができそうだ。

下は、旧1巻・改訂版ともに共通する記述だけど、「千代田区 5」の項から引用。
「聖橋下は神田川である。昔は駿河台と北の文京区湯島は地続きであった」。
ふむ。続いて…、
「お茶の水堀は、家康が伊達政宗と江戸城中で碁を打った時、政宗が一石うつごとに『北から攻める』『北があぶない』といったので、やがて政宗に命じて江戸城北の固めのために掘らせたものだという伝説がある。/工事は政宗の子の綱宗の代まで引きつがれた大工事であった。その掘り割り工事で掘り取った土は、日本橋一帯の埋め立て用に使われたのであるが、完成とともに、飯田橋から神田川が流通して、浅草橋から舟入りができるようになった。しかし大手門工事と、この工事では、仙台藩は巨額の財産を使い果たすという大痛手を受けた」…。

「北があぶない」というより、一手ごとにつぶやいている政宗さんがあぶないような。ま、それはさておき。
面白いなあ。記述が簡潔でいい。
ただ、この記述だけ読むと、今の整備された神田川(お茶の水近辺)を想起してしまうが、矢田挿雲『江戸から東京へ』にある「明治初年のお茶の水」の写真を見ると、両岸から木々がせり出した神田川(であろう)のそれは、ほとんど「深山幽谷」である。

だいぶ趣が違うのである。

こうやってあちこちの本を飛びながら、自分の想像を修正されていくことは、楽しい。


別の本。
紀田順一郎『神保町の殺人』(東京創元社 2000年)は推理短篇を三話収録。
「第一話 展覧会の客」は、『古本屋探偵の事件簿』「殺意の収集」のエピソードと一部共通。「第二話 『憂鬱な愛人』事件」は松岡譲の実在の上下本をめぐってのお話。「第三話 電網恢々事件」は、ちょっとそのトリックでは警察の目はごまかせないなあ。
あとがきから引用。
「神保町という名は、江戸時代に神保という旗本が住んでいたことに由来するというが、この人物が愛書家だったという話は聞かない。一九四七(昭二十二)年に猿楽町や今川小路、一ツ橋通町ほかを編入して現行の神田神保町という町に改められた。/戦後の神保町の復興が早かったのは戦災を免れたからだが、これは東京帝国大学で学んだ日本学者エリセーエフが、古書街には爆撃をしないようマッカーサーに進言したためといわれる。真偽は定かではないが、周囲の町がすべて爆撃されているところを見るとリアリティーが感じられる」

では、井上ひさしや逢坂剛や村上春樹は神保町をどんな風に書いたか。東京案内本に限らず(孫引きじゃなくて)、現代小説・エッセイ、いろいろな本からの記述で充たした「東京ガイド」なんて、読んでみたい(作るのは難しいけどね)。

と、上記のようなことをつらつら考えたり記したりしていたら、細野不二彦『東京探偵団』のアジトが神保町だったんじゃ、と指摘を受けました。そうそう、棚から本を引き抜いて操作すると、他なの裏が地下室につながっていたんだよな……。なんて魅力的な設定だろう。

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